隠し剣孤影抄 (文春文庫)



隠し剣孤影抄 (文春文庫)
隠し剣孤影抄 (文春文庫)

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「秘剣」と「深遠な女性心理」の巧みな融合

数々の秘剣の呼称を各作品の題名に付け、その剣技の妙と共に男女の機微を描いた魅力溢れる短編集。特にヒロインの描写が玄妙を極め、剣技が霞む程。旧来の剣豪小説の枠をはみ出した意欲作と言える。秘剣の呼称を「邪剣」、「臆病剣」などと敢えてネガティヴに付けている所も心憎い。

「邪剣竜尾返し」は古代の歌垣を思わせる幻想的な冒頭から始まり、主人公の剣敵の妻の真意を中心として虚実が曖昧模糊としたまま物語が終ると言う奇譚。「臆病剣松風」は「たそがれ清兵衛」を思わせる内容で、ホノボノとした夫婦愛が微笑ましい。「暗殺剣虎ノ眼」は一見平凡な藩の権力闘争と見せかけて、結末でヒロインと読者を闇に落とす手法が卓抜。「必死剣鳥刺し」は主人公の過酷な運命と対比するかのような結末のヒロインの明るさと逞しさが物語に救いを与えている。「隠し剣鬼ノ爪」は木目細かい自然描写を背景に、秘剣の意外な用途、妖艶な美女の悲哀、純情な娘の可憐さが一体となって描かれた秀作。「女人剣さざ波」は既読だったが、何度読んでもヒロインの一途さと健気さに胸が熱くなる傑作。「悲運剣芦刈り」は男女の業の深さを扱ったものだが、秘剣の運命以外はやや平凡か。「宿命剣鬼走り」は二人の藩士と、二人が想いを寄せる尼の数十年に渡る宿縁をミニ大河ドラマ風に描いた異色作。

迫力ある剣技と深遠な女性心理と言う男性にとって魅力的な二大テーマを巧妙に織り交ぜて描いた時代小説の傑作短編集。
読み始めると止まらない!!

はじめて触れた藤沢周平氏の作品が本作でした。
『秘剣』を授けられた剣客8人のそれぞれのドラマが、各編にギッシリと詰まっていて、読む者を飽きさせない作品でした。
主人公たちはただ単なる剣を極めた武士ではなく、弱さや優柔を持った武士であり、藩命や愛する人の窮地を救うために秘殺剣を使う。
作品中の臨場感やストーリー展開が読者を釘付けにします。
時代小説に縁のない方にぜひ一読をお勧めしたい作品です。
『武士の生き様』を描いた味わい深い短編集

一撃必殺の技。ただひとりに伝承され、それを受け継ぐ剣客8人。そうした秘剣の
継承者でありながら、彼等はほとんどが下級武士で不遇のうちにある。そんな彼ら
が時に運命に、時に己の心の弱さに翻弄され、その剣を抜く。
彼らの行動とその行く末に、彼らの武士の意地、義を重んじる心、事を前にした
潔さといった、『武士の生き様』が真っ直ぐに描かれており、どことなく憧れとも
郷愁とも似た想いを感じられるような、味わい深い短編8作が収められている。
個人的には、
・必死剣鳥刺し
・悲運剣芦刈り
・宿命剣鬼走り
に感銘を受けた。この世界観は作者独特の境地だろう。時代小説ファンなら思わず
唸る作品だと思う。
巻を措く能わざる面白さ

小説としての完成度は、全体的には『隠し剣秋風抄』の方が高いとみますが、悲話の多い本書も、忘れがたい名編ぞろいの作品集でした。特に、巻末の中編である「宿命剣鬼走り」は、森鴎外の「阿部一族」を思わせる滅びの美学に満ちた佳品で、読後しばしの間立ち上がることができませんでした。とにかく一読をお薦めします。
『隠し剣』シリーズはホントに面白い

初出はオール読物の昭和51年10月から昭和53年3月。単行本は昭和56年1月。

何しろ『隠し剣』シリーズはホント面白い。出てくる主人公がみんな個性的だ。続巻の『隠し剣秋風抄』では最後に藤沢周平自身があとがきを書いていて、3ヶ月毎にやってくる締め切りが楽しめた、と書いている。なかなか無い感想だ。

印象に残ったのがまず『女人剣さざ波』。夫の替わりに果たし合いに行く妻という設定が凄いな。そしてラストの『宿命剣鬼走り』だ。山田洋次に二番目に映画化された『隠し剣鬼ノ爪』は面白かったが最高ではなかった。映画化するなら絶対『宿命剣鬼走り』だと思う。これは実に良くできている。是非とも次の作品として山田洋次に映画にして欲しい。期待しています。



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